「わたしゃテントを必死に押さえてたんだけど、だめだったねぇ。最後は一気に飛んでっちゃったわよ。でも道路にテントが飛んでいったのを見て、『あ、車が来たら・・・』と思ったら、偶然にも車がこなかったのよ。あれ、車、走ってきてたら絶対大事故になってたわねぇ」
体操の木村先生(仮名)が、昼食の時につぶやいた。得てして、事故にあうときは悪い偶然が重なるのだが、事故を逃れるときというのは、よい偶然が重なるのである。
しかし、惜しむらくは私の中止の判断がもう少し早ければ・・・というところか。
雷のことが頭にあったため、暴風雨については、事実、マークが薄かった。もう少し早く、あのどんよりとした暗さを認識できれば、もっと安全に学生を避難させられたし、人数確認の指示も早く出せた・・・そう思いながら、全員で昼食を摂れたことを感謝したり・・・。
その中で、水上先生(仮名)からこんな話が。
「いやぁ、最初我々が沖で準備していたときに、子供づれの家族が手漕ぎボートで沖に出てたでしょ」
あ、確かにそうだった。
「あの家族大丈夫だったかな?と思って、岸に帰ってからしばらく沖を見てたんですけど、しばらくしたら、その家族のボートを岸に向かって走って引いてくる河井(仮名)たちの姿が見えたんです。一年生や女子の補助学生たちは、かなり怖がっていましたけど、さすが4年生ですねぇ」
この暴風雨。ライフセーバーたちにとってもあまり経験したことがないくらいの規模であったようらが、4年生の彼らは、学生たちの無事を確認したあと、そのほかの遊泳客に対しても救助活動を行っていた(あるいは行おうと準備していた)というのである。
さすがに私も、正直そこまで頭は回っていなかった。普段は彼らを指導する立場にあるのだが、今回ばかりは彼らを頼もしく思え、さらに、学生たちのことが思考の大半を占めていた自分の至らなさを、自省した。